エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「それはどういう意味だ」
「後腐れのない一夜限りと心得ています。先生にご迷惑はお掛けしません。私も遊びでしたから」
小さな声だがきっぱり言いきった。それ以外になかった。
本意でない政略結婚を持ち出し、思い出づくりだったと言えば好意があると受け取られかねない。それは避けたかった。
雅史からただならぬ不穏な空気が漂ってくる。
その言葉ではなにか足りなかっただろうか。過ちと割りきっているだけでは物足りないか。
ぐるりと思考を辿って、ひとつ大事なことに気がついた。
「もちろん誰にも口外しません」
楓が誰かに漏らすのを不安視しているのかもしれない。大切な縁談が控えているのに妙な噂を流されたくないだろう。
ところが雅史は不満そうに眉根を寄せたまま、楓の言葉に納得していないようだった。
「キミも俺と同じ気持ちじゃなかったのか」
いつになく鋭い眼差しに責められているよう。
なにを言いたいのかわからず、鼓動がドクンと弾む。