エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
これまで国内の出張には同行していたから不思議ではないが、一線を越えてしまったため素直に頷けない。
「それとも職務を放棄する?」
すぐに答えない楓を訝りつつ、雅史がせっつく。
仕事の放棄は楓にとってなによりも避けたいことだ。職務はしっかりこなしたい。
それに、ここで変に気にして〝行かない〟と答えたら、あの夜の一件を気にしていると思われるだけ。遊びだったと言った以上、それは避けたい。
「同行させていただきます」
律儀に頭を下げて返した。
満足そうに頷いた雅史が、「海老沢さん」と名前を呼んだそのとき。部屋のドアがノックされ、こちらが返事をするまでもなく扉が開かれる。
顔を出したのは、院長秘書の田所だった。
「本日の午後、なにかお急ぎのご予定は入っていらっしゃいますか?」
挨拶もすっ飛ばして唐突に尋ねられた。