エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
その午後、ランチをとった楓は、雅史に連れられ院長室の前までやってきた。
要件が推測できず妙な緊張感に包まれながら、ノックをした雅史に続いて入室する。
院長室には大きなデスクと書棚、そして立派な応接セットがある。楓は何度か入ったことがあるが、どことなく緊張をもたらせる部屋は病院のトップの肩書きのせいだろう。
楓は院長夫人に会ったことはないが、おそらく雅史は父親似だ。ずいぶん前に、若い頃にはかなりモテたという噂も聞いたことがある。楓の父親とは同年代だが、少し老けているか。
慎一はふたりにソファに座るよう手で促しながら、ゆったりと腰を下ろして微笑んだ。
友好的な態度だが、院長のため緊張感は変わらない。
「忙しいところお呼び立てして申し訳ありません」
向かいに座った慎一が、穏やかな話しぶりで切りだす。
「早速ですが、本題に入らせてもらいます」
その視線が一直線に楓に注がれた。