俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 撮影は順調に進んでいた。
 最初は慣れない環境に手こずることもあったのだが、玲二の言った事を意識すると自然と上手くいった。

「自分の殻に籠っていた女性が、このヴェネツィアに来て自分を解放していく。そんな気持ちで」

 監督はそう言った。
 役が自分に近かったためか、気付かぬうちに自己投影しており自然体で撮影に臨むことができた。

「はい、カット! いいよ、すごくよかった! シーン確認するね」

 監督のカットがかかり、運河でゴンドラに乗るシーンはそのまま撮影を終えた。
 どこかすっきりした様子で次の撮影まで体を休めていると、近くに置いていた自分のスマートフォンのバイブ音が耳に届く。
 手に取り、中を除くと『香澄』と表示されていた。この香澄という人物は所属する劇団スペードの先輩で、私は香澄先輩と呼んで慕っているひとだ。
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