俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
真面目な性格のためか、こはるはきちんとホテルまでやってきた。どこか不満そうな表情をしていたが、人の呼び出しを無碍に出来る性格ではない事が分かっている。
『……で、いったい何の用ですか? 私にも予定があるんですが……』
『ああ……まあその』
俺は珍しく口籠もってしまう。
何を言えばいいのかこのとき整理できていなかった。九つも離れている女に対し、我ながら情けない。
いつもであれば揶揄う様な軽口が叩けるのに、今は心臓が早鐘を打っていた。
俺は目を逸らしながら指を指す。
『とりあえず席につけ。飯を運ばせるから』
35階フロアは普段高級フレンチの提供をするレストランだったが、この日は貸切にしていた。
渋々頷いたこはるは俺に言われた通りに席につく。おそらく周囲のスタッフたちを慮ってのことだろう。