俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
こはるは怒気を含んだ声でいい募る。
俺はあまりのことに呆然とした。
こはるにその様な場面を見られていたことなど知りもしなかった。たしかに一度寝た女にしつこく迫られたために強い口調で追い払ったことはあった。その瞬間を見ていたのだろう。
ここまでこはるに拒絶されるだなんて、信じられなかった。今まで俺が接してきたものは皆、擦り寄ってくるか逆に遠ざかるかの二択だった。
まれに命知らずか妬みをぶつけてくることはあったが、少し脅せばすぐに目の前からいなくなることはあった。
特に女は色目を使ってくることが多く、こはるのように強い拒絶を示されることなど一度もなかったのだ。
怒りすら忘れて言葉を失う俺に対し、こはるは端的に呟く。
『ここでおろしてください。もう家はすぐそこなので』
俺は黙ったまま車を止める。
そして車の扉を開けて出て行くこはるの後ろ姿を見送った。