社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「うち、小さい頃優しいお兄ちゃんやお姉ちゃんにすっごく(ぶぅ〜ち)憧れたんよ。ホンマ実篤(さねあつ)さんみたいに素敵なお兄さんがおる鏡花(きょうか)ちゃんがうらやましいっちゃ」

 同窓会の会場になる大広間はこのホテルの八階だ。
 鏡花とふたり、エレベーター待ちをしながら、実篤を基軸とした話に花が咲く。


「そう言やぁ八雲(やくも)兄が言いよったん、くるみちゃんは覚えちょるん?」

 実篤の家で食事会をした先の夜。

 栗野家次男坊の八雲が、実篤の塾仲間の一人――草津(くさつ)香澄(かすみ)の事を話したのを思い出したくるみだ。

 名前が〝香澄〟という中性的なものだからよく間違われるけれど、くるみのハトコ・草津香澄は実篤同様正真正銘立派な男性だ。

 香澄はくるみの祖母和子の兄・草津正一の孫なのだが、塾のある日は香澄にとっては大叔母に当たる和子の家で、両親が迎えに来るのを待つのが常になっていた。

 香澄同様、時折母の職場に程近い祖母宅で両親の迎えを待つ様に言われていたくるみは、月に数回鳩子の香澄と親待ちタイムがかち合って。
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