社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***

 会場に着くと、入り口のところに受付があって、名前を言って会費を支払うと、名簿にチェックを入れてくれてから名札を渡された。

 裏に安全ピンとクリップがついたネームプレートは、表にふりがな付きでフルネームが記されていて。

 高校生の頃つけていた名札は苗字だけで、これの四分の一ほどの小さなものだったから何となく恥ずかしいなぁと思いながら受け取ったくるみだ。

 鏡花(きょうか)とともにそれを胸元につけたら、
「小学生の頃の名札を思い出すね」
 『栗野(くりの)鏡花(きょうか)』と書かれた名札を付けた鏡花が、くるみの胸元を見てクスッと笑う。

 その言葉にふと視線を落としたら、胸元で『木下(きのした)くるみ』と書かれた名札がキラリと照明を反射した。

「ちょっぴり恥ずかしいとか思うちょるん、うちだけ?」

 小声で鏡花に耳打ちしたら「同じく」と返って来た。

 鏡花みたいに大きな組織に勤めていたら、今でも胸元にネームプレートを付けたり、首から社員証を掛けたりするのかも知れない。
 だけどくるみは個人経営の移動パン屋さんを営んでいるから、そういうのに無縁なのも照れ臭さに拍車を掛ける。
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