社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「うち、実篤(さねあつ)さん以外目に入らんけんっ!」

 むぅっと唇を突き出してそう言ったら、鏡花(きょうか)が「それ聞いて安心した!」と微笑んだ。

「え?」

 さっきまでの口ぶりだと、鏡花は実篤と自分との交際に余りいい印象を持っていないのかと思っていたくるみだ。

 鏡花からの意外な言葉に思わず彼女を見つめたら、「言うたじゃん? 私、こう見えてお兄ちゃんのこと、嫌いじゃないんよ」と淡く微笑んでみせる。

 その言葉にくるみがコクッと頷いたら、

だからね(じゃけぇね)、くるみちゃんみたいに可愛い子が相手で私、ちょっと不安じゃったんよ。【あんとな顔しちょるけど】お兄ちゃん、結構繊細なところあるけん」

 兄のことを心底気に掛けているような口調のくせに、〝あんな顔〟と律儀に実篤を下げる言葉を織り込んでくるのが鏡花らしい。

「お兄ちゃんがくるみちゃんにメロメロなんは気持ち悪いほど伝わってくるけぇさ。もしくるみちゃんにフラれたらって考えたら絶対落ち込むん目に見えとるじゃん? 私や八雲(やくも)兄の前では絶対そういう素振り見せんのんじゃけど……影でわんわん泣くタイプじゃけぇ。それは嫌じゃなぁって思うたんよ」

 そこでくるみを真剣な顔で見つめてくると、鏡花がポツンと言った。
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