一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
インターホンが鳴っている音で起こされた。

そのまま寝てしまったようで、気がつくと夜になっていた。

私は明かりをつけ、インターホンを見ると松下さんが映っていた。
応答すると、松下さんの息は上がっていて「紗夜、大丈夫か?」と慌てた声が聞こえる。

「松下さん。大丈夫ですよ」

「何回も電話したのに出ないし、メッセージも返事が来ない。来てみたら部屋が真っ暗だから何かあったのかと思って。何もないなら良かったよ。またな」

私の無事を確認しに慌ててきてくれたんだ。
そう思うとさっきまで冷たくなっていた体も心も急に熱を帯びてきた。血が通うのが分かった。 
このまま帰ってしまいそうな松下さんに会いたくなってしまった。

「松下さん、どうぞ」

私はそういうと玄関の鍵を開けに行った。
ドアを開けると飛び込んできた。
私をギュっと抱きしめてきた。

「紗夜!今週ずっと体調悪そうなのに頑張ってたから心配だったんだ。電話も出てくれよ。心配したじゃないか」

「ごめんなさい」

「紗夜、どうしたんだ?何かあったか?」

私は首を振る。
松下さんの胸に顔を埋め、彼の腕の中にいるだけでホッとしてしまう。
私はこの手を求めてもいいのだろうか?
彼と一夜の関係を持ってしまったが、それで子供ができたことは彼にとって青天の霹靂だろう。
子供を理由に彼を縛ってはいけない。
そう頭では思っても、私はどうしてもこの胸の中にいたかった。

「松下さん……」

「なんだ?紗夜」

「私、赤ちゃんができたんです。今日病院に行ったら今2ヶ月でした」

「え?それって。俺との子だよな?」

私は顔を見ることができず頷いた。

「そうか。分かった。結婚しよう」

松下さんはすぐに私と結婚をしようと言ってくれた。

え?
結婚?
私は驚いて顔を上げると松下さんは私の顔を見て、改めて言ってくれた。

「紗夜、責任を取るよ。俺と結婚しよう」

私はこの子を利用して彼を縛ってしまったんだと思った。
松下さんならこうするかもと分かっていたのに
私は卑怯だ。
でも松下さんが好きだから、自分から彼の腕の中を抜け出せなかった。

松下さんはすぐにお見合いを断りに行こう、入籍をしようと言ってくれた。
お見合いのことを気にしてくれてとても嬉しいがすでに父に断りの話は兄がしてくれている。
ここで松下さんが出ていくのが吉か凶かわからない。

そもそも子供ができたから結婚してくれるという彼に、私の家の面倒ごとには巻き込みたくなかった。

「お見合いは断りました。相手の方とはご縁がなかったので妊娠がわかる前にお断りしました」

「そうなのか?なら改めてご両親に挨拶に行こう」

「今体調が悪いのでまた九州に行くのは辛いです。落ち着いてからで大丈夫ですから……」

「そうか。ならすぐに俺の家に越して来い。無理なら俺がここに住むよ。体調が良くなったら新居を探そう。子供が生まれるんだから広いところを探そう」

松下さんは嬉しそうに話し出した。
子供のこと、喜んでくれて良かった。
私との間にできたなんて彼にとっては本望ではないかもしれない。
でもこうやって父親になってくれるという彼に感謝しかない。
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