一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
すると車の音が聞こえたのか母が玄関から出てきた。

「紗夜、おかえりなさい。松下さんですね?初めまして、紗夜の母です」

「初めまして、松下拓巳です」

「どうぞお入りになってくださいね」

そういうと拓巳さんと私を中へ入れてくれた。
お兄ちゃんも後からついてきた。

客間に入るとテーブルには所狭しと料理が並んでいて、私は驚いた。
父はすでに座っており、私たちが部屋へ入っても無表情のままだった。

「松下拓巳です。電話では失礼しました。結婚のお許しをいただきたく参りました」
そういうと拓巳さんは畳に膝をつき正座して頭を下げてくれた。
私も隣に並び、座り込んだ。
父は何も言わない。
私は沈黙に耐えきれず、立ちあがろうと思った時、父が動き出した。
私たちに近づき、拓巳さんの前に正座で座ると頭を下げてきた。

何が起こったのかわからなかった……。
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