独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 その感情を隠して、奏一のいたずらを止めさせるために咄嗟に出た言葉が『真似をしないで』だった。けれど奏一はその態度も面白くなかったらしい。

「じゃあ『俺』を見て、結子」

 ひどく真剣な声で名前を呼ばれ、恐る恐る奏一の顔へ視線を戻す。てっきり怒っているのかと思ったが、目線が合った奏一は少しだけ悲しそうな顔をしていた。

「俺、遊んでなんかないから。それだけは本当に誤解しないで欲しい」
「奏一、さん」
「うん」

 真剣な声で結子の心に説く。絶対に誤解されたくない……そんな強い想いを感じ取って、結子も導かれるように顎を引く。

 そして彼の名前を呼ぶ。それは『父親の仕事の都合でたまに会う昔なじみのお兄さん』の呼び方ではない。

 この先の生涯を共に歩み続ける人。結子だけの人。その声に短く頷く奏一もまた、結子を自分だけの人だと認識している。たとえ政略のために結んだ縁だとしても。

「無理に抱きたいわけじゃないんだ。……けど結子の夫は、俺だけだから」
「……わかってる。でも、心の準備がいるの」

 奏一の言い分もわかる。男性は女性よりも性に対する欲が強く、その衝動が心身に及ぼす影響も著しい。彼のいう『健全な大人の男』である奏一にも、性の欲望が沸き起こることもあるだろう。

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