独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
それにここはイリヤホテル。日本に数件しかないほどのレア名字ではないが、かといって何万人単位で存在する名字でもない。従業員に『入谷』と名乗れば間違いなく経営者一族やその関係者であると知られるだろう。
面倒なことには巻き込まれたくない。というわけで、今日のところはミスを訂正しないまま放置させてもらうことにしよう。
「さすが、総支配人が連れてきたフローリストですね。デザインのビジュアルラフだけでクライアントの要望を完璧に再現できるとは……すばらしい腕前です」
「いえ、そんな……」
上野がニコリと微笑んで称賛の言葉を並べる。だから結子も営業スマイルを貼り付けて社交辞令として受け流す。
結子の花を好きな気持ちもクライアントの依頼に真摯に向き合いたいという気持ちも、もちろん本物ではある。
だがプロフェッショナルと名乗るにはまだまだ半人前で、先日も自分の未熟さで大失敗をしたばかりだ。賛美の言葉は嬉しく思うが、必要以上の褒め言葉はまだ自分には早い。
「大事な依頼を当日になってキャンセル。しかも代替のフローリストも派遣しない。……とんでもない事業所とは大違いです」
(!?)
上野の言葉に結子も同意して頷きかけた。だが次の瞬間、結子は思いもよらない衝撃体験に見舞われた。