独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

(え、ちょ……? どこ触って……!)

 ふと気が付くと、正面にいたはずの上野がいつの間にか隣に並び立っていた。そして結子の背中から腰に手を回し、腰とお尻の間……際どい場所に指先が触れている。気がする。

「あなたのショップに……いえ、あなたには是非うちのサロンとも取引をして頂きたいものです」
「いえ……あの……」

 ――気のせいではない。
 上野は突然、結子の身体を抱き寄せて身体をべたべたと触り始めてきたのだ。

(え、何この人……気持ちわるい……!)

 ブライダルパーティの会場となるホールの中にはパーティ準備中のスタッフがいるはずだし、ホワイエの階下にある一階エントランスやラウンジにはホテルのスタッフやチェックインをするための宿泊客が大勢いるはずだろう。

 だから声を出せばいい。
 会場か下階へ逃げればいい。

 なぜ結子が、初対面の人に急に身体を触られなければならないのだろうか。

 しかもここは彼の職場だ。取引関係はないとは言え、職場で何かトラブルを起こせば不利になるのは間違いなく彼のはずなのに。

(そういえば責任者が……って……)

 ふと奏一との会話を思い出す。

 奏一は『責任者がとんでもないことをやらかしていた』と言っていた。なんの責任者なのかはわからないが、トラブルはブライダル部門の取引先であるフラワーショップなのだ。

 ならばその『責任者』は、この上野という男なのではないか?

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