振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「琴音、楽しんでいますか?」
振り返ると、アジームが何かの飲み物が入ったグラスを持ってきてくれた。
グラスの中では細かい泡が弾けるように音を立てている。
私は渡されたグラスをジッと見つめていた。
別に疑っているわけでは無かったが…。
「ハハハッ、大丈夫だよ、心配しなくても、グラスに変な物入れてないぞ…」
アジームは私のグラスを、掴むと一口飲んで見せた。
そして、飲んだところをポケットチーフで拭った。
「…ほら、これで安心だろ。ちゃんと飲んだところも拭き取ったし、美味しいから飲みなよ。」
グラスを受け取り、そっと口に入れてみる。
すると、口の中に花の香りが広がり細かい炭酸が口の中で心地よく弾けた。
思わず口角が上がる。
「これ!…美味しい!」
「だろ!…これベルエボックっていうシャンパンなんだ。花の香りが良いだろ…気に入ってくれたようだね。」
アジームは目を細めて微笑んだ。
エキゾチックな美しいアジームと、このシャンパンに酔ってしまいそうになる。
「琴音…君を無理に攫うようなことをして悪かったな…僕のものになれと言ったのは…本当は嘘だったんだ…でも、嘘ではなくなりそうだな。」
「…嘘?どういう事でしょうか?」
アジームは、私の頬に手を添えてもう一度微笑んで見せた。
しかし、それ以上は何もアジームは話してくれない。
そして、何も言わないままどこかへ歩いて行ってしまった。
いったい、どういう事なのだろうか。
全く分からない事ばかりだ。