【書籍化&コミカライズ】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(離婚予定の結婚なのに〜)
スッ……と隣に大きな影が並ぶと同時に、サラリの揺れる黒髪が視界に入る。
「覚悟、出来たんですね」
私にしか聞こえないくらいの小さな声。
「――!?」
顔をあげると、薄い唇の端を上げた、島田さんの感情の読めない涼し気な美貌が私を覗き込んでいた。
「どうなっても、知りませんよ」
彼は突然そう断言すると、私が言葉を口にする前に、長い腕を私の腰へと回した。
「……え? ――ひゃ……」
わわっ、いきなりなに……? なんで、くっつくの……。
目で訴えるものの、彼は卒倒しそうな私に意地の悪そうな笑顔を向けるだけで、離してくれる様子はなくて。
この距離はまずい。この前のこと、おお、思い出しちゃうよ……!
『ほら、あなたみたいに無防備な人は――』
眼鏡の無い端正な面立ち。
頬を傾け近づいてくる柔らかかった薄い唇――。
だめだめ! 今はだめだよー!!
「エスコートです。こういう場では、これはマナーでしょう」
……へ?
一気に霧散する甘い記憶たち。
目の前にはすでにポーカーフェイスに戻った綺麗なお顔。
「え…、えすこーと」
そ、そうなの……? 当たり前なの?