【書籍化&コミカライズ】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(離婚予定の結婚なのに〜)
「そう、TPOというものがありますからね」
なんだかこっちに気付いた会長がビックリしてるような気もするけど。
有無を言わさず腰に触れる指先に力が籠もり、くいっと引き寄せられ触れ合う体。
あ……。
薄いワンピース越しにピタリと彼の体温を感じて一気に心拍数が上昇する。
でも――そっか、格式が高いレストランでは普通のことなんだ。
ドキドキするけどしてる場合じゃない。恥をかかせてしまう。
「あ、ありがとうございます……」
素直に笑顔でお礼を告げると、返事の代わりにフッと微かに眼鏡の奥で目元が優しく緩む。
他の人から見ればわからないような些細な変化だけど、ずっと見てきた私にはわかる。
仕事のときよりも断然柔らかくて、優しげな雰囲気だ……。
ど、どうしよう……。彼のすべてに胸がときめいて、幸せで……好きだ。
大きな手のひらの感触に、再び蘇りそうになるキスの記憶を必死に押し込めながら、レストランを優雅に進む。
……でも“どうなっても”って、彼はなにを考えているのだろう……?