――あそこの娘は気立てが良く働き者だ。

 その娘というのが少年の妹だった。彼は言った。

 ――働き者を失ったら、村の大きな損害です。

 さらにある人が言った。

 ――なら、君が代わりに神の元へ行くか。
 彼はそれに承諾した。

 妹が選ばれるよりはましだと思った。


「俺は家族の中でもはみ出し者で、両親からは疎まれていました。だけど、妹だけは俺に優しかった。だから、妹を救いたかった」
 でも、本当は、と続ける。「妹のいない家の中で暮らしていくことに、俺が耐えられなかったのかもしれない。両親は妹を溺愛していたし。だからきっと妹がいなくなったら、俺と両親の間はもっとこじれていた。俺はそこから逃げるために、それを承諾したのかもしれない。村人たちは、自分ではない誰かがやってくれればいい、と思っていたから、生贄が妹から俺に変更しようと、大した問題ではなかったんだ」

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