少年は抱えた膝に顔を埋めた。

 ――この、役立たずが! お前なんか、この家から出ていってしまいな!

「家族や村人たちが憎いか」
 冷たい声が降り注いだ。
 その声が今迄とは違ってあまりにも冷たいものだったので、驚いて顔を上げその人の瞳を見つめた。
 冷眼が突き刺さる。答えなければ、ならない。

「憎いと思わないと言ったら嘘になります。だけど、憎いのならば、きっと今、俺はここにいません。守りたい人がいるから、ここにいるんです」

 逃げようと思えばいつだって逃げられただろう。明日、もし自分がこの場にいなかったとしても、村人はきっと神様が連れていったと思うだろう。この儀式が行われている夜間誰もこの神社にはやってこないのだ。人間如きが神様の姿を目にしてはならないからだ。だから、逃げようと思えば逃げられたのだ。この両手足を束縛していた縄を切ることができたのなら。

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