でもそれをしなかったのは、これからこの村でずっと暮らしていくだろう妹を救いたかったからだ。成長期の妹に、もっと美味しい野菜や果物を食べさせたかったからだ。妹を見守っていたかったからだ。

 火あぶりが怖いという気持ちもある。逃げたいという気持ちもある。だけど、逃げようと思っても逃げられなかった。心のどこかで自分が犠牲になってでも妹だけは守りたいと考えていたから。もし自分が逃げ出して、村に雨が降らなければ、今度は妹が生贄に選ばれるだろう。それだけは避けたい。

「それもそうかもしれないな」
 彼の答えを聞いて、その人の表情が和らいだ。

 お前のような人間がまだ残っていたとはな、と小さく呟く。
「今回はお前に免じよう」
 その人は音も無く立ちあがった。ついてこい、と言う。

 少年は月の光に照らされているその金色の人の後ろを歩いていく。目の前を歩く金色の姿は、どこか儚げで今にも消えそうにも思えたが、自分を引っ張っていってくれるような力強さも感じた。
 着いた場所は、乾涸びた田んぼの真ん中だった。乾涸びた田んぼは、その土壌に潤いなど一つもなく、からからに乾いてひび割れている。

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