お姉さんに視線を向け、ずずずいと顔を近づけて彼女は言う。やはり女として、何か敵対するものがあるらしい。お姉さんは、そうだな、と笑った。眞子は馬鹿にされた、と思ったのかもしれない。お姉さんに向かって言葉を続ける。

「全く、あなたって嫌な人ね。美人さんだから得しているでしょ。私たちなんて、見世物になって、自分たちを磨いて生きているというのに」

「あら、それは私たちが自分から望んだ生き方ではないかしら?」
 別な団員が口を挟んだ。

「えぇ、分かっているわ。けれどこの人の何でもできます、っていう、その余裕な表情が羨ましいのよ」
 一団は笑った。彼女があまりにも真剣に言ったからだ。少年は言う。

「お姉さんは、何でもできるわけではありませんよ。ただ、無表情なだけです」

「失礼な言い分だな。無表情ではないぞ。表情が乏しいだけだ」

「姉ちゃん、自分で自覚しているんじゃ、駄目だなぁ」
 と団長。

 お姉さんは笑った。けれど、他の人と比べてその笑みは少し曇って見えた。

 初めて野宿をしたとき、思ったほど怖くはなかったことを覚えている。そして今日は、どちらかというと楽しい。それは踊りの一団がいたからかもしれないし、空が綺麗だったからかもしれない。

 妹は元気だろうか。彼は寝る前にふと思い出した。

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