少年の問いに、その人は答えなかった。

 月光がきらきらとその人へ降り注ぎ、その金髪を反射させている。
 その中で微笑を浮かべているその人は、神のように美しかった。

「でも私は、人間など食べない」

 言い、その人は手の中に残っていた果物をぺろりと口の中へ放り込んだ。
 そして。
「てっきり、何かのいたずらかと思ったよ」
 指先を舐めながら言う。

 笑みを浮かべているその人を見ると、なぜか心が穏やかになっていく。手の中で遊ばせていた果物に目をやると、少年もそれにクシャリと噛み付き、勢いよく食べ尽くしてしまった。お腹は間違いなく空いていた。そしてこんなに美味しい果物を食べたのも久しぶりだった。だからついつい、一気に食べ尽くしてしまったのだ。

「それで、なぜ君が生贄になど選ばれたのか教えてくれないか」

 その人が言った。そう問うその声までもが安らぎを与えてくれるような感じがした。

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