雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「お前な〜、ここでそのセリフを吐くか!?」

 突然がっくり崩れ落ちた進藤が私の胸元に顔を埋めた。
 さっきから進藤の行動の落差も激しい。
 と、急に顔をあげた彼と目が合う。

「まさか、お前、処女か?」
「なっ、いきなりなに言うの? 違うに決まってるでしょ!」
 
 したことぐらいあるわよ! 一回は!
 その最低の経験を思い出して、嫌な気分になる。

 ──おい、マジで、お前、あの真面目ちゃんを落としたのか?
 ──ちょろかったぜ? ちょっと甘くささやいただけで、ほいほい家についてきて。
 ──で、どうするんだ?
 ──飽きるまで相手してやるか……って、うわっ、冗談……グェッ!

 ムカつく同級生の顔をグーで殴って、金輪際、恋愛はしないって決めた。私は仕事に生きるのよ!
 受験で精神不安定になっていたとはいえ、私としたことがバカなことをしたわ……。

「思い出すな!」

 最悪な思い出を回想していた私の顎を掴んで、進藤はなにを思ったのか私に口づけた。

「んっ、んんっ〜」

 口に吸いつかれ、にゅるりと熱い舌が入ってくる。
 
(な、なにするのよっ!)

 じたばたするけど、口の中を探られて、舌を擦り合わされるとぽわっと身体が熱くなってくる。
 そうか、なにかで読んだことがある。身体を温めるには身体を重ね合わせるのが一番いいって。
 もしかして、進藤はそれをしようとしてるの?

 それが正解だったようで、彼は私の胸まで揉み始めた。
 こねくり回され、尖ったところを摘まれ、身体が熱くなってくる。
 好きにすればって言っちゃったしな。
 進藤も寒いのかもしれない。こんな冷えた私と毛布に包まっても温まらないし。

(しょうがない。女に二言はないわ!)

 しぶしぶ私は進藤に身を任せた。



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