雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 朝になり、目を覚ますと、私は進藤をベッドにして寝ていた。
 上には毛布だけでなく彼のダウンコートも掛けてあり、寒さはなかった。
 相変わらず、裸のままだったけど、よく考えたら、夜には服は乾いてたんじゃない?
 目をつぶる進藤のあどけない顔と昨日の色っぽい顔とが一致しない。

(昨日のは夢ね。忘れるに限るわ)

 私はそっと身を起こし、さっさと服を身に着けた。

 外を見ると快晴。
 よかった、宿に帰れそう!

 しばらくすると、進藤も起きて、ぼーっとしている。
 起き上がった身体から毛布が落ち、裸の上半身が剥き出しになる。

(均整の取れた身体を見せびらかそうってわけ?)

 ぼんやりしている進藤は私と目が合うと、ニコッと微笑んだ。

(あざとい! あざと可愛い! でも、私にその手は効かないから!)

 ぷぃっと横を向くけど、ヤツはまったく気にしていないようで、のんびりと着替え始めた。
 朝は苦手らしい。
 進藤の弱点を発見した。



< 16 / 95 >

この作品をシェア

pagetop