雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 案内された新しい部屋は、結構広かった。
 畳敷きの十五畳くらい?
 床の間に縁側もついていて、雪見障子から見える中庭の雪景色が綺麗だった。
 いつの間にか、私の荷物はこの部屋に移されていた。

(昨日の部屋より良さそうだけど……)

 荷物を置いただけですぐ別荘に向かったので、あまり昨日の部屋を覚えてなかったけど、格段にレベルは上な気がする。

「なあ、今日はどうする? 今さらあの別荘には戻らないだろ?」

 備えつけの急須でお茶を淹れてくれながら、進藤が言った。
 気が利くアピールがウザい。
 お茶は女が淹れるものと思ってる男よりはいいけどね。

 本来なら明日から出張で、当然、現地調査も明日から。
 先を越そうと思った進藤がここにいる時点で抜けがけは無理だし、そもそもバスが運休なら足がない。

(それなら……!)

 私はさっきからウズウズしていた考えを実行することにした。

          


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