雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
「っていうか、あんたも脱ぎなさいよ! あんただって、意識してないでしょ?」
「……してるよ」
「え、なに?」
「なんでも。下着も脱げよ」

 ぼそっと言われた言葉は聞き取れず、毛布を渡された。
 進藤は私に背を向け、さっさと服を脱いでいく。
 引き締まった男らしい背中を見てしまって、慌てて目を逸らした。

 私は毛布に包まりながら、ブラを外し、ショーツを脱いだ。
 肌に貼りついていたのが気持ち悪かったから、スッキリする。

 そうしている間に、進藤はボクサーパンツひとつになった。
 細いけどしっかり筋肉はあって、身体まで綺麗なのがムカつく。
 そして、私ひとり毛布を被っているのが、気になった。

「ちょっと! こっち来たら?」

 振り返った進藤が目を見張った。

「私だけ毛布使うのも悪いし……」

(借りは作りたくないし!)

 あまりに驚いた顔をするので、遠慮されてもムカつくと、手だけ毛布から出して、ちょいちょいと呼んだ。
 
「おっ、まえ〜、本当に意識してないんだな……」

 あぐらをかいて頭を抱えてしまった進藤のそばに、もそもそと這い寄った。
 埒が明かなさそうなので、バサッと彼を毛布で包む。

「「冷たっ!」」

 私は進藤の濡れたパンツに触れてしまって、彼は私の身体に触れて、悲鳴をあげた。

「濡れてるじゃない!」
「どんだけ冷えてるんだよ!」

 思った以上に近い距離で顔を見合わせて、ふっと互いに視線を逸らす。

「ぬ、脱ぎなさいよ!」
「脱いでもいいのかよ」
「べつに! 私は気にしないし!」
「ふ〜ん」

 進藤はもぞもぞとパンツを脱いで、ストーブの前に放った。
 それを見て、二人とも真っ裸なのを意識してしまった。

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