極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 それに実家では私にはわざわざ紅茶を出してもらったが、慶子さんは衛士には好みを聞かず、最初からコーヒーを用意していた。

 そういえば朝食にパンケーキを焼いて出したとき、驚かれたけれどあれは内容以前の問題だったのかも。

 思い出せば出すほど、亜由美さんの言葉が正しいんだって思い知らされる。

『未亜は俺と似ていて正反対だったから』

 うん、でも無理して合わせる必要なんてなかったんだよ?

 すぐに自分の考えを否定する。衛士を責めるのは間違っている。気づけなかったのは私だ。

 彼には私が嘘をつくのが苦手なことも、泣くのを我慢する癖も全部見破られていたのに。私、自分のことばかりで衛士をちゃんと見ていなかった。見せてもらえていなかったんだ。

 衛士は私のどこに惹かれたの? ずっと嘘をつかせていたのに、無理をさせていたのに。

 彼の本音はどこにあるんだろう。あんな別れ方をしたから私に引け目を感じて、今もずっと偽っている部分もあるのかな?

 衛士は茉奈のことを可愛がってくれているけれど、子どもが欲しくなかったなんて知らなかった。自分の子どもがいるって知って、本当はどんな気持ちだった?

 疑心暗鬼が止まらない。絵に集中できず、結局私はじっくりと楽しめないまま美術館を後にした。

 そのまま帰るのももったいない気がして美術館の敷地内にあるベンチに私は腰を落とした。ちょうど木陰になっていて、今は太陽が隠れているのもあり比較的過ごしやすい。
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