極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「未亜が杉井電産の社長の娘とか、ラグエルとの取引とか関係ない。未亜自身に惹かれたんだ」

「……私も、私もだよ」

 泣きそうになりながら、やっと返せたのはそれだけだった。

 私も衛士自身を好きになった。彼の肩書きを知らなかったからだけじゃない。衛士と過ごして、彼に惹かれて今も衛士だけを求めている。

 衛士は力強く私を抱きしめた。

「未亜が嫌だと言っても、もう二度と離さない。俺には未亜が必要なんだ」

 濡れている私の髪を彼が撫で、衛士のスーツを濡らしてしまうとわかっているのに、私は彼の背中に腕を回す。離れたくない。

「雨でよかった」

 私を抱きしめたまま呟かれた衛士の言葉に、ちらりと彼を見上げる。衛士は優しく微笑んでいた。

「雨だからこうして未亜を見つけられて、捕まえられたんだ」

 ゆるやかに顔を近づけられ、唇を重ねられる。雨はまだやみそうになかった。

 抱き合って少しだけ気持ちが落ち着いた頃、衛士は私をそっと解放し、次に彼は素早く自分のジャケットを脱いで包み込むように私の肩にかけた。

 どう見ても高級そうな代物で私は慌てる。

「いいよ、私より衛士が」

「いいから。おとなしく来るんだ」

 放り投げた傘を拾い、彼はそのまま私の肩を抱いて歩き出す。急に強引な衛士の態度に戸惑いが隠せない。

 もう濡れてしまった上着を今さら返しても遅い。私はかけられたジャケットの端をぎゅっと握り、おとなしく彼の車の助手席に乗り込んだ。
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