極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 躊躇ったのも束の間、このままにもしておけず私は電話を受け取る。相手はわかっている、慶子さんだ。

「あの、慶子さん」

『未亜ちゃん? 頼ってくれて嬉しいわ。茉奈ちゃんともっと過ごしたかったの。茉奈ちゃんは何組さんだったかしら?』

 先に質問されてしまい、私はおとなしく答える。慶子さんはすっかり迎えに行く気になっていた。

『心配しないでね。私もこれでも子育て経験者なんだから。なにかあったら衛士に連絡するわね』

「す、すみません」

 謝罪の言葉を伝えると、電話の向こう側で慶子さんが苦笑したのが伝わってきた。

『謝らないで。未亜ちゃんが全部背負うことないのよ。なんなら今度は衛士を行かせたらいいわ』

 そう言って茉奈に関することをいくつか尋ねられ、電話は切れた。私は自分のスマートホンで保育園に祖母が迎えに行く旨を連絡する。

 電話を切り、急ぐ必要がなくなって安堵した反面、言い知れぬ罪悪感に襲われた。

「いいのかな。慶子さんに急に頼んじゃって……茉奈だって」

「未亜が風邪をひいたら、みんな心配するし、茉奈だって困る。もっと自分を大切にしろ」

 煮え切らない私に衛士が厳しめの口調で告げてきた。……たしかに、彼の言う通りかもしれない。

「うん、ごめんね」

「謝らなくていい。未亜がいつも一生懸命なのはわかっている。ひとりでなんでも解決しようとするのも。だからそんな未亜を甘やかすのが俺の役割だって思ってる」

 そんな義務的に感じなくても、と思ったが衛士はふっと笑みをこぼした。
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