極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「その、高野さんは恋人とかいないんですか?」

 未亜の探している本を俺が持っているという話になり、マンションに見に来るかとさりげなく誘うと、彼女から予想外の切り返しがあったのだ。

「ちょっと待って。今、その質問?」

 柄にもなく本気で聞き返す。なにかを試されているのかと思ったが、未亜は真面目だった。

「あ、あの。質問に答えなくてもいいです。本をお貸りできるならマンションの近くまで取りに行きますから」

「そうじゃなくて」

 俺は思わず肩を落とした。たしかに今まで自分たちの関係をはっきりさせる言葉を言ってはいなかったが、多少なりとも未亜も俺と同じ気持ちだと思っていたから、これにはショックを受けた。

「恋人がいたら、こんなふうに誘って、ふたりで会ったりしてないよ」

 未亜は違うのか。俺と会うのも、父親に言われて義務的に会う男性と大差ないのか。

「そ、そうですね。でも高野さん、素敵な方なので……」

 未亜の反応で思い直す。違う、逆なんだ。彼女にとっては、こうして自分の意思で男と会う経験はなかったのだろう。

 だからこの俺との曖昧な逢瀬をどう捉えていいのかわからないんだ。

「恋人はいないけれど好きな相手はいるんだ」
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