極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 そうやって未亜と過ごすうちに、いつも明るくよく笑う彼女が時折表面上は笑っているのに、今にも泣きだしそうな顔をするときがあると気づいた。

 それを指摘すると、未亜は誤魔化そうと躍起になる。

「えっ? してない。そんな顔してないよ。心配かけてごめん」

「未亜」

 俺は彼女の名前を呼び、優しく告げる。

「我慢しなくていい。俺の前でまで無理に笑う必要はないんだ。未亜がいつも頑張っているのをちゃんとわかっているから」

 未亜の背負っているものを俺に話していないからか、いや、おそらくそれは関係なく、彼女はすべて自分の中で不満はつらさを消化しようとする。

 父親とぶつかることも多いだろうし、仕事でつらい思いをしているのかもしれない。それを上手く吐き出せないのなら、せめて寄りかかってほしい。

「あの、私……」

「大丈夫。そばにいるから」

 正面から抱きしめると、未亜は静かに泣きだした。そのことに安堵する。理由は聞かなくてもかまわない。

 ずっとひとりで抱えるのが当たり前だったのなら、俺の前では無理をしないでほしい。

 アメリカへの帰国まであと半年を切ったとき、俺は未亜にようやくすべてを話す決心をした。

 本当はもっと前に話すべきだと頭ではわかっていたのだが、未亜を失いたくない気持ちが決意を揺るがせ、ずるずるときてしまった。

 ラグエルジャパンと杉井電産の交渉の件は、もう関係ない。未亜自身が欲しくてこれからもずっとそばにいてほしい。
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