極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 その想いを伝えるために俺は婚約指輪を用意した。ふたりの間で具体的な結婚話をしたことはないし、もしも俺がラグエルジャパンの後継者だと知れば、未亜は父親との板挟みで悩むかもしれない。

 そう思って一時は、彼女の前から高野衛士として消えるのがいいのかとも思った。けれどやっぱり俺は未亜を諦められない。俺の気持ちは変わらないんだ。

 未亜さえよければ一緒にアメリカに来てほしい。もしくは籍だけ入れて二、三年日本で待っていてもらうか。

 未亜はどんな反応をするだろうか。

 ところが、未亜を呼び出してプロポーズをしようとした日、約束前の時間に彼女から電話があった。

「未亜? どうし――」

『質問に答えてほしいの』

 珍しく強い口調の未亜に思わず息をのむ。まさか、と思った瞬間、未亜が続けた。

『衛士は……本当は朝霧衛士っていうの? ラグエルジャパンの社長令息なの?』

 どこで彼女はその事実を知ったのか。しかし今はそこじゃない。しばし逡巡した後、俺は小さく答える。

「……そうだよ」

『なら私が……私が杉井電産の社長の娘だって最初から知ってたの?』

 電話の向こうで未亜が動揺しているのが伝わってくる。当然だ。言い訳が先に口をついて出そうになったが、それよりも今は嘘をついていた彼女に真摯に向き合うべきだ。

「……ああ」

 そしてすぐさま事情を説明しようとする。

「でも未亜、俺は」

『もう二度と会わない』

 ところが彼女の口からは、はっきりとした拒絶の言葉が紡がれる。ここで俺は、慌てて事情を説明しようとした。
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