極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「君がうちの娘と結婚すればすべて丸く収まる」

 杉井社長の言葉に俺は目を見張る。未亜はまだ結婚していないのかと思い、まずはそこなのかと自分の思考回路に呆れる。

 それにしても彼はなにを考えているんだ?

 買収を避けるために結婚を言いだすならまだしも、こちらはそのつもりはないのに。この結婚で誰が得をする?

「……お嬢さんが納得しませんよ」

 顔をしかめて返したが杉井社長は歯牙にもかけない。

「そうかもしれない。けれど君は必ず娘に結婚を申し込む。絶対にだ」

 それは、どういう意味なんだ? 杉井社長は俺の気持ちを……未亜との関係を知っているのか? 仮にそうだとしてどうしてこんな真似を?

 様々な疑問をぶつけたくなる。しかしそのとき病室にノック音が響く。

「お父さん、調子はどう?」

 現れたのはずっと会いたかった未亜だった。最後の記憶より髪が伸びて、雰囲気が大人っぽくなっているが、持ち前の明るい雰囲気や声は変わらない。

 その彼女の顔が、俺を見た瞬間、凍りついた。

「……なん、で」

 当然の反応だ。わかっていたはずなのに、わずかに胸が痛む。そこから未亜はまったくこちらを見ようとせず、杉井社長から話を聞いている。

「未亜が彼、朝霧衛士くんと結婚するんだ」

「……なに言ってるの?」

 結婚の話が飛び出したとき、未亜の目はこれでもかというほど大きく見開かれた。無理もないし、すんなり納得できるわけがない。

 しかし杉井社長は淡々と説明していく。
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