極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「お前たちが結婚すれば、買収ではなく業務提携の形で、社長である私の娘の伴侶として彼がラグエルと共に杉井電産を仕切ってもなんら問題ない」

「無理よ。結婚なんてできない」

 間髪を入れない拒絶の声が室内に響く。今更、俺の気持ちをぶつけたところで未亜はきっと心を開いたりしない。

 もしかすると他に想いを寄せている異性がいるのかもしれない。

 そこで未亜と目が合う。すぐさま逸らされたが、どこか動揺しているのが伝わってきた。結婚話だけに関してじゃない。彼女はなにか隠しているのか。

 昔から未亜は隠し事が下手だった。嘘をつくときの視線の逸らし方がいつも決まっている。

「茉奈のことか?」

 彼女を凝視していると杉井社長から女性の名前が飛び出した。一体、なんの話だ?

「茉奈?」

 思わず口を挟んで尋ねてしまう。答えたのは杉井社長だ。

「娘は、未婚で子どもがいるんだ。一歳半で」

「お父さん!」

 遮るように未亜が叫び、その場に沈黙が降りる。俺はとっさに状況がつかめずに混乱する。未亜に娘? 一歳半?

「杉井電産をどうするのかはお父さんの判断に任せます。でも、ごめんなさい。私は期待に応えられません」

 彼女はうつむいたまま硬い声で言いきり、その場を素早く立ち去った。俺は杉井社長への挨拶もそこそこに彼女を追いかける。

 未亜と別れたのは二年前の四月だ。じっくり計算するほどの余裕はない。けれど未亜と話さなくては、と思った。
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