極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 落ち着いた色合いのブラウンカラーに白のラインが入っていて、サテン生地は肌触りがよく気に入っている。

 これにカーディガンを羽織っているとはいえ、彼に比べるとかなりラフな格好なのは自覚している。

「どうぞ、上がって」

 こういうとき、付き合っていた間柄なのは楽だ。あまりにもだらしないところを見られるのは嫌だけれど、一応彼と夜を過ごした経験もあるから、そこまで気を張る必要はない。少なくとも私は。

 そう思うと衛士の前では、私は素の自分でいられたんだな。

「これ、土産」

 衛士から差し出された小さな紙袋に意識を向ける。店のロゴを見て、すぐに中身の見当がついた。

 私が好きな紅茶専門店のものだ。付き合っていたとき、私がここの紅茶が好きだと伝え、彼の家で淹れて飲んだのをきっかけに、ふたりで過ごすときの定番の飲み物になった。

「うん、ありがとう」

 衛士はとくになにも言わないけれど、きっと私の好みを意識して買ってきてくれたんだ。

 今日会うことは突然決まったから、ネットではなく直接お店に行ったんだ。比較的遅くまで開いているとはいえ、お店はわりとここから遠いのに。

「さっそく淹れていい? 飲む?」

「ああ」

 短い返事がありリビングのドアを開ける。カーテンで仕切られた部屋の向こうが寝室で茉奈が寝ていると先に説明した。

「ジャケット、預かろうか?」

 エアコンが効いているのでどうかと思ったが、衛士はさっと脱いで渡してきたので、皺にならないようハンガーにかける。

 続けてネクタイを緩める彼に、思わずドキリとして反射的に目を背けた。
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