極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「前提もなにも未亜は俺と結婚するんだ」
「私の意思は無視なの?」
「まさか。だからこうして必死に口説き落としている」
思わず噴き出しそうになる。軽快なやりとりがどことなく付き合っていた頃を思い起こさせ、なんだか気が抜けた。
そして心の中でもうひとりの冷静な私が、訴えかけてくる。
本当はとっくに理解している。茉奈のためにも、父の……杉井電産のためにも、衛士と結婚するのが正しいんだ。もう恋はしない。政略結婚でかまわないって割り切っていたじゃない。
「……もしも好きな人ができたらどうするの?」
緊張で喉の渇きを覚えながら私は声を発した。
「未亜に?」
「衛士に、だよ」
間を空けず返すと、どういうわけか眉をつり上げていた衛士は顔を強張らせた。お互いに政略結婚だと割り切っていたとしても、子どもには関係ない。結婚して茉奈を悲しませるなら本末転倒だ。
「俺は、未亜や茉奈を誰よりも大切にする。未亜を失うような真似はもう二度としない」
自分の中の懸念を吐き出し、彼の回答にひとまずホッとする。心なしか張り詰めていたものが緩んだ。
「……うん」
不意に改めて彼と目が合い、言葉がなくてもこのあとの展開を悟る。こちらをうかがうように距離を縮められ、おもむろに私が目を閉じるのと唇に温もりを感じたのはほぼ同時だった。
まるで初めてキスを交わしたときみたいだ。重ねるだけの優しい口づけは懐かしくて甘い。
「私の意思は無視なの?」
「まさか。だからこうして必死に口説き落としている」
思わず噴き出しそうになる。軽快なやりとりがどことなく付き合っていた頃を思い起こさせ、なんだか気が抜けた。
そして心の中でもうひとりの冷静な私が、訴えかけてくる。
本当はとっくに理解している。茉奈のためにも、父の……杉井電産のためにも、衛士と結婚するのが正しいんだ。もう恋はしない。政略結婚でかまわないって割り切っていたじゃない。
「……もしも好きな人ができたらどうするの?」
緊張で喉の渇きを覚えながら私は声を発した。
「未亜に?」
「衛士に、だよ」
間を空けず返すと、どういうわけか眉をつり上げていた衛士は顔を強張らせた。お互いに政略結婚だと割り切っていたとしても、子どもには関係ない。結婚して茉奈を悲しませるなら本末転倒だ。
「俺は、未亜や茉奈を誰よりも大切にする。未亜を失うような真似はもう二度としない」
自分の中の懸念を吐き出し、彼の回答にひとまずホッとする。心なしか張り詰めていたものが緩んだ。
「……うん」
不意に改めて彼と目が合い、言葉がなくてもこのあとの展開を悟る。こちらをうかがうように距離を縮められ、おもむろに私が目を閉じるのと唇に温もりを感じたのはほぼ同時だった。
まるで初めてキスを交わしたときみたいだ。重ねるだけの優しい口づけは懐かしくて甘い。