極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 そもそも何度も会っているとはいえ、まだ衛士に茉奈を預けるのも不安だ。

「だったら決まりだな」

 さらりと衛士が決定事項として固める。強引な彼に目をぱちくりさせていたら、彼は私をしっかりと見つめてきた。

「未亜の希望を叶えたいんだ」

 そのとき私の注文していたパスタがテーブルに運ばれたので受け取る。すると衛士が席を立ち上がった。

「代わる。茉奈は俺が見るから」

「でも」

「いいから。たまにはゆっくり食べたらいい」

 衛士の言葉で私は彼と席を代わった。今度は茉奈と隣に座る衛士を眺める立場になる。

 衛士は私がしていたことをよく見ていたらしく、茉奈の口を適度に拭いてやり、水を飲ませたりしている。茉奈も彼に世話を焼かれるのを受け入れつつ食べ進めていた。

 新鮮な気持ちでパスタにフォークを絡める。

「衛士、さっきの話だけれど」

 私から切り出すと、彼の意識がこちらに向いた。

「行くなら苺の季節がいいかも。茉奈が好きなの」

「わかった」

 私の答えに衛士は隣にいる茉奈を見て笑った。

「茉奈は、苺が好きなんだな」

「すきー」

 うどんを食べつつ茉奈が主張する。なにが好きと言われているのかまでわかっているのか、いないのか。でもフルーツが好きな茉奈は絶対に喜ぶだろうな。

 想像すると楽しみになってきた。茉奈と外で食べるのを決めてこんな気持ちになるのは初めてだ。

 きっと私ひとりでも茉奈を連れていけるかもしれない。けれどどこか億劫で、茉奈が大きくなったらと自分に言い聞かせていた。
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