極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 開始時間ギリギリだったのでうしろの方の席に座ったが、無事にイルカショーを観ることができた。

 ボールに向かって飛び跳ねるイルカの芸は以前の来たときと同じだ。その勢いでプールの水面が派手に揺れ、前の方に座る観客たちが濡れてしまうところまで。

 茉奈は終始大興奮で、イルカを指さし、声をあげてはしゃいでいた。嬉しそうでなによりだ。

 一通り楽しんだ後、水族館のショップに入る。とくに欲しいものはなかったが、案の定、茉奈は人形のコーナーで足を止めた。

 数種類ある中で彼女が欲しがったのは、やはりイルカのぬいぐるみだ。カメのぬいぐるみとも迷っていたが、持ちやすさもあったのかもしれない。

 離さないと言った雰囲気で買う気満々で抱きかかえている茉奈を見て苦笑する。

 いつもなら軽くたしなめて元に戻すが、今日の思い出にいいかもしれない。家族三人で出かけた初めての記念に。

「茉奈、大事にしてね」

「はい」

 返事は一人前の茉奈に笑ってしまう。ショップを出ると、外の広場の柱にもたれかかっていた衛士がこちらに気づき手を上げた。

 そちらに足を進めようとしたら、両手でイルカを抱えた茉奈が彼の元に駆け出す。

「あっ!」

 そう私が叫んだのとほぼ同時、私と衛士のちょうど真ん中辺りで茉奈が転んだ。

 ある意味、予想できた展開だ。やはり抱っこしておくべきだったと後悔しつつ茉奈の元に駆け寄る。

 茉奈はゆっくりと立ち上がり、先に衛士が腰を落とし茉奈の様子をうかがっていた。
< 68 / 186 >

この作品をシェア

pagetop