極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「相談したら未亜はすんなり受け入れていたのか?」

 混乱する私に衛士が聞いてくる。

「それは……わかんないけど」

「ほら」

 どうして衛士の行動が正しいという流れになっているのか。不信感を滲ませた目で見つめたら、さすがに衛士も思うところがあるのか眉をしかめて頭を掻いた。

「嫌なのか?」

「嫌って言ったらどうするの?」

 すぐに答えられず質問で返す。

「戸建てを用意する」

「そういう話じゃないって!」

 反射的にツッコんでしまった。ああ、もう。どこまで本気なのか。けれど私が冗談でも『戸建てじゃないと住まない』なんて言った日には、衛士は本当に一軒家を用意しそうだ。

「なら俺はこの広いマンションに一人で暮らして、仕事終わりに足繁く未亜と茉奈のところに通うしかないな」

 現に彼に対して申し訳ないと思っていた件を持ち出され言葉に詰まる。

 アパートへは衛士の職場、ラグエルジャパンからけっこうな距離があるのだが、彼は仕事が終わってからうちによく顔を出してくれていた。

 茉奈が起きているときに少しでも会いたいと、急いでやって来ることもしばしばだ。だからアパートから近いここからの職場の距離も大概だ。

 そういう意味で衛士にとっては不便な状況にもかかわらず、私や茉奈の生活をあまり変えないようにと気遣ってくれたんだ。

「そ、そういう条件で持ちかけるのは卑怯だと思う」

「自覚はある。この状況なら未亜が無下にするわけないと思っていたから」

 いけしゃあしゃあと返す衛士に私は脱力して肩を落とした。けれど、すぐさま思い直す。今日、彼と一緒に過ごして思った。
< 76 / 186 >

この作品をシェア

pagetop