極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「これは、もう性分みたいなものだから。衛士と付き合っていたときが特別なの」

 過去を思い出しつつ、極力明るい口調で白状する。

「我慢していた涙、衛士が全部見透かしちゃうんだもん」

「未亜は隠し事や嘘をつくのが下手だから」

 呆れたような懐かしむ言い方に私は苦笑する。そういえば茉奈の存在が父によって彼に伝わったときも、とっさに誤魔化した私の嘘は彼にあっさりばれた。

「そういう衛士は隠し事も嘘をつくのも上手かったよね」

 なにげなく言い返し、声にしてからしまったと思った。その証拠に私たちを包む空気に気まずさが走る。今のはどう考えても嫌味にしか聞こえない。

「か、過去の話はおしまい。私、ちょっと茉奈の様子を」

「未亜」

 離れようとする私の腕を衛士が素早く掴んだ。

「たしかに俺は、最初から未亜が杉井電産の社長の娘だって知っていて近づいた。名前もわざと偽っていた。でも未亜に惹かれた気持ちに嘘はない」

「いい。わかってるから」

 聞きたくないと、突っぱねて拒絶の姿勢を取る。とっくに自分の中で折り合いはつけた。この結婚に納得もしている。だから今更また心が乱れるようなことはやめてほしい。

 しかし衛士は腕の力を緩めず、それどころかもう片方の手を私の肩に乗せて自分の方へ引き寄せた。珍しく本気で力を入れられ、逃げられない。

「言い訳はしない。未亜を傷つけたのは事実だ。でも、ちゃんと話しておきたい。聞いてほしいんだ」

 切羽詰まった衛士の声に私は抵抗をやめた。けれど彼の顔は見られずうつむき気味になる。強く握られていた力がわずかに緩んだ。
< 79 / 186 >

この作品をシェア

pagetop