極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「そんな情報、どこで?」

 そこで私は、衛士がラグエルジャパンの社長令息だと知った経緯を話していなかったことに気づく。

 衛士に呼び出されて会いに行く前に、父の部屋で専門誌を見た旨を話した。父から衛士が結婚する話があると聞いたことも。

 すると衛士は眉間に皺を寄せ、不機嫌そうに息を吐く。ひしひしと彼の苛立ちが伝わってきて、少し身をすくめる。

「俺は、あんな雑誌に載ることは知らなかったんだ。写真だって勝手に使われて。記者がラグエルに取材に来たとき、対応した広報担当者が未来の後継者だって俺の話をして、父親の独断で記事にするのを許したらしいが……」

「でも、婚約者がいるって」

 こわごわと口を挟むと、衛士は苦虫を噛み潰したような顔になる。

「そんな存在はいない。あまりにも俺が結婚に消極的だから、父親同士が知り合いで家族ぐるみで付き合いのある幼馴染みと結婚させようなんて話もあったらしいが、俺にはまったくそんな気持ちはなかった」

 ここまで嫌悪感をあらわにして強く言い切る衛士は珍しい。でも婚約者の存在を否定されてホッとしている自分もいる。

 衛士は我に返ったように、再び私を真っすぐに見つめてきた。

「あのとき未亜に全部話して、結婚を申し込むつもりだった。アメリカ行きは決まっていたけれど、未亜についてきてもらうか、それが難しいなら俺が戻るまで待っていてほしいと伝えたかった」

 信じられないと言うのは簡単だ。そんなの今更だって。でも怖いくらい真剣な衛士の面持ちから、彼の本気が伝わってくる。
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