極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
「もう二度と離さない。誰よりも幸せにする。未亜も茉奈も俺が守っていくから」

 ようやく彼の背中に躊躇いなく腕を回して応えられた。

 衛士の体温や心音が伝わってきて安心して身を委ねる。やっとありのままの自分でいられていることに気づいた。

 不意に衛士が腕の力を緩め、そっと額に口づけを落とされる。

 驚きで彼の方を見ると、視線が交わり顔を近づけられる。目を閉じたら予想通り唇を重ねられた。

「……好き」

「本当に?」

 唇が離れるのと同時に呟いた内容に、衛士が食いついた。

 私は素直に頷く。

「うん」

「もう一度」

 まさか言い直しを求められるとは思わなかったので、目をぱちくりさせる。衛士は不敵に口角を上げ、焦らすように私の唇を親指の腹でなぞった。

「せめて嫌いって言われた回数よりは多く言ってもらわないと」

 衛士の指摘に肩を縮めた。当時の心境とはいえ彼に散々嫌いと告げてしまった。一回や二回ではなく何度も。

「あれは……」

 言い訳しようとしたら衛士は、今度は私の唇に人さし指を当て、静かに制する。

「わかっている。でも未亜の今の確かな気持ちを聞きたいんだ」

 切なそうな面持ちの彼に心が突き動かされ、気づけば自分から衛士にキスをしていた。

「好き」

 勢いで唇を押し当てるだけの口づけの後、衛士の首に腕を回し再度身を寄せる。

「大好き」

 無意識に募らせていた衛士への想いを私自身やっと自覚して言葉にできた。あふれんばかりの気持ちをどうすれば本人に伝えられるのか、自分でもよくわからない。
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