ココロの距離が離れたら
(2)
暗闇の中では、男と女の艶やかな喘ぎ声と、ギシギシッというベッドがきしむ音が響く。

「ん、んんっ」

女が自分の声が出ないようにときゅっと唇を閉じると、それを見た男が不満そうに眉をよせ、自分の顔を女に近づける。
そのまま女の唇を舐め、その隙間から舌を差し込んでいき、女の舌をずずっと吸った。

「声、だせよ」
「んっ で、もっ・・」

いつまでたっても、何度彼と愛し合っても、自分の声は恥ずかしい。
そう思っていることなど分かっているはずなのに、男はそれを許さず、口の中を蹂躙する。

「ああ、あん、ん、んんんっ」
「ふ、はっ」

男の両手は女の体の敏感な部分を熟知している。その部分を更に優しく、時に強く触れることで女の気持ちが更に向上していく。
男はその様子を熱い眼差しで見続ける。

「あああんっ!!」

それだけでもう昇りつめそうな女の両脇に手をつき、男は更に力強く女を愛していく。
今までも十分息も絶え絶えだった女の呼吸はもう苦しそうだ。

「綾、い、けっ」
「ん、あああ、ああんっ」

ぎゅうっと抱きしめられて、女がその幸せな気持ちに満ち足りた瞬間、男もその欲を女の体内に皮膜越しに吐き出していく。

は、はっという2人の息が落ち着いてきたのを見計らって、男は女から出ていく。
心地よい疲れと大切な人の肌の温かさにしばらく酔って、無言のまま見つめあった。
お互いの瞳には愛情が見える。
と、綾には思えるのだが。

「た、いち?」
「ん?」

少し声が枯れている女の声に誘われてまたキスを繰り返す。が、これ以上は体力が持たない。
男は体を離して、後の処理をし、それからまた女の隣にもぐりこんだ。

「あの、話したいことがあるんだけど・・・」
「うん、あー、でも、またでもいい? もう疲れて、眠くて・・・」

そう言いながらも、男は既に瞼が重いようで、何度声をかけても起きてはくれなそうだ。

「分かった。またにするね」
「うん、おやすみ」

言うが早いか、すーっと寝息まで聞こえそうな状態で眠ってしまう男を見て、女は小さく溜息をついた。
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