ココロの距離が離れたら

部長からの相談があったのはもう2週間前だ。
返事は早いほうが良いけど、長期出張になるからよく考えてねって言って頂いた。
本来なら即辞令が出ても良いのに、優しい上司だと思う。
なのに、まだ一番話したい相手とは何一つ話せていない。

ね、大智、分かってる?
昨晩会えたのは、2週間ぶりだったんだよ。
2人で肌を重ねたのは3週間ぶりだったんだよ。
デートしたのは先月末だった。デートと言っても仕事帰りに2人で夕食を食べて、この部屋に戻ってきただけだけど、それでも楽しかった。

相談したくて、最初に話しがあると言ったのは、部長と話した日。2週間前。
「今度ゆっくりね、今忙しくて」
そう言ってたから、無理強いしたくなかった。
それから何度か、メッセージアプリで「時間ある?」と聞いても「無理」「また後で」としか返ってこない。

ね、大智、分かってる?
ゆっくり会話をしたのが、その先月末のデートの時が最後だったって。

このプロジェクトが始まったのが9月。
少しずつ忙しさが増していって、土日の休出が増え、その分休日に束の間の休みをとってるらしいと連絡が来たりして。
10月に入ると、2人の時間はまたも取れなくなって。
それでも私がここに来る間は、一緒に夕食を食べたり、朝食を食べたりできるかな、と工夫して会っていて。
話しができなくても、一緒にいれる時間があるからまだ不安は無かったけど。
11月は経理部の人が1人寿退職してしまって、その補充で新しいスタッフが入って教えることもいっぱいあって、私もとても忙しくなって、大智のマンションに来る回数も減ってしまった。
その分、更に会話したり、触れ合ったりする時間がなくなっているって。

「大智はさみしく、ないのかな」

ぽつりとこぼれた言葉は、1人きりのマンションにやけに大きく響いた。


* * * 
大智のマンションを出ると、ピピピっというアプリの音が響く。
もしかして?と期待をこめて、メッセージアプリを開くと、親友の幸からだった。

「大智が忙しいから暇してるんじゃない? 私のランチにつきあって!!」
「なんでわかるかなぁ」

苦笑いが出てしまったが、このまま帰ったらきっと真っ暗な週末を送ることは目に見えているので、ここは有難く親友のお誘いにのっかることにした。
そこで、見たくもないものを見るはめになるとは思いもしなかった。


* * *
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