別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
母がなにかを言いかけたが、陸人さんがそれを制するように小さく首を横に振っている。

なにやら目配せしているように感じるのだけれど、なんなの?


「そう、ですよね……。心春は天沢さんと結婚したいのね?」
「はい。彼と一緒に生きていきたいです」


母の質問に答えると、父は複雑な顔をしながらもうなずいている。


「天沢さん。私たちは心春が泣く姿だけは見たくない。心春は随分つらい思いをしてきました。もうこれ以上泣かせたくないんだ」


父が語気を強める。

両親が傷痕のことで悩む私を見て、心を痛めてきたのを知っている。
私が泣くたびに、いつも盾になってくれた。

そんな両親が改めて私を守ろうとしてくれているのだとわかり、胸がいっぱいになる。


「もちろん泣かせません。どうか私を信じてください」
「信じてあげれば?」


いきなり部屋に入ってきたのは、兄の謙一(けんいち)だ。

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