別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「ありがとうございます」


私は早速袋に詰めて会計を始めた。


「本宮心春さんですよね」
「えっ? ……はい」


バッグから財布を取り出した女性が私の名前を口にするので手が止まる。


「私、吉野(よしの)と申します。陸人さんの同僚です」


陸人さんの同僚?


「お医者さま、ですか?」
「はい。野上で内科医をしています」
「はじめまして」


笑顔で会釈したのに、彼女は表情ひとつ変えず、どこか冷めた雰囲気を漂わせていた。


「お仕事、何時に終わりますか?」
「……十九時過ぎには終わるかと」
「少し話がしたいので、十九時頃からすぐそこのカフェでお待ちしています。それでは」


有無を言わせぬ言い方で約束を取りつけた彼女は私に笑いかけて出ていったが、その笑みが無理やり作ったものだとすぐにわかった。

私を見つめる目はずっと冷たい色をしていた。

なんだろう。胸騒ぎがする。



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