別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
十九時の閉店のあとすぐさま指定されたカフェに赴くと、紅茶を楽しんでいた吉野さんは「どうぞ」と席に促してくれる。


「お待たせしてごめんなさい」
「いえ。こちらこそ急にすみません」


メニューを手渡され、コーヒーを注文したあと会話が始まった。


「陸人さんは、アメリカですね?」
「はい」


私が答えると、吉野さんはしばらく黙り込み、紅茶を口に運んでいる。

それにしても〝陸人さん〟って。ただの同僚ではなさそうだ。

緊張で手に汗握る。

気まずい雰囲気が流れたまま沈黙が続いたけれど、私のコーヒーが運ばれてくると彼女は口を開いた。


「私、陸人さんとは家族ぐるみのお付き合いをしているんです。私の父と彼のお父さまは大学時代からの友人でして、幼い頃からよく両家を行き来していました」


それを聞き、陸人さんの縁談の相手は彼女なのだと気づいた。

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