別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「黙り込むなんてずるいわ。自分がよければ、陸人さんがどうなってもいいんですよね」
「違う……」


私はムキになって言い返した。
断じてそれだけは違う。


「あなたが正しい道を選んでくれることを祈ってます。それでは」


吉野さんは紅茶を半分残して去っていった。


「正しい道……?」


陸人さん、あなたは私を愛してなんていないの?
傷にキスをしてくれたのも、罪の意識から?

頭が真っ白になってしまった私は、それからしばらく動けなかった。



そのあと、どうやって家にたどり着いたか覚えていない。気がつけばベッドに座って放心していた。


そういえば……。
傷痕について打ち明けたとき、陸人さんは『この傷を負ったのはどうしてか覚えてる?』と私に尋ねた。

初めて知ったはずの彼がする質問にしてはおかしいと感じたのだが、やはり彼は以前から私の背中に傷があるのを承知していたに違いない。

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