別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
これが親子の初めての対面だなんて複雑だ。
でも、今は凛が無事にこの腕の中に戻ってきてくれればそれでいい。


ドア越しに、声が聞こえてくる。


「麻酔して洗浄する。――凛ちゃん、最初だけチクッとするけどそのあとは痛くないからね。少しだけ頑張ろう」


陸人さんは指示を出したあと、凛に優しく話しかけている。

救急と聞いて殺伐とした雰囲気を覚悟していたが、凛に怖い思いをさせたくないので助かった。


「……うん」
「えらいな」


凛のか細い返事を陸人さんは褒めている。

陸人さんが子供と接する姿を見たのは初めてだけれど、子供の扱いがうまいのが意外だった。

いや、彼は誰にでも優しいのだから当然か。


麻酔を打ったのだろう。
凛は一瞬泣き声をあげた。

しかし、「上手にできた。すごいぞ」という陸人さんの励ましで泣きやんだ。

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