別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
重さんは、弟子までいたほどの料理人だ。

それなのに、素人の私にも簡単でおいしく仕上がる方法を惜しげもなく伝授してくれる。


「もちろん。さつまいも好きなんだよね。天ぷらにするとき薄力粉に片栗粉混ぜてみな。サクサクになるから」

「そうなんですか。作ってみます。でも、天ぷらはハードルが高い」


重さんの揚げるかき揚げを食べたら、自分では作れなくなる。
サクサク具合がまったく違うし、脂っこくないのだ。


「俺たちみたいに、これでお金をもらっている者はそれなりに作らないといけないけど、家でつくる料理は心さえこもっていればいいんだよ。あれこれ考えすぎて調理が嫌いになったらどうしようもない」


その通りかもしれない。
一流料亭の板前と同じようにしなくてはと気負っていたら、そのうち料理そのものをやめてしまいそうだ。


「心を込めてか……」


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